外壁塗装は「支出」ではなく「資産のメンテナンス」です。FPが考える住まいの守り方
家を持つと、思っていた以上に「お金のかかる出来事」が次々とやってきます。
固定資産税や保険、修繕、車の買い替え、教育費…。
その中でも「外壁塗装」は、多くの方が一度は悩まれる大きな出費のひとつです。
ただ、ファイナンシャルプランナー(FP)の立場から見ると、外壁塗装は単なる支出ではありません。
それは、資産を守るための“メンテナンス投資”です。
見た目を整えるための贅沢ではなく、長期的に見て「家の価値を維持するための支出」なのです。
住まいは買った瞬間から「減価」していく資産
住宅は、購入した瞬間から少しずつ劣化が始まります。
日光・風雨・気温差による膨張や収縮。
外壁の塗膜は、目に見えないレベルで毎日すこしずつ傷んでいきます。
塗装の役割は、単に色を塗ることではなく、「防水膜を再生すること」です。
この防水膜が弱まると、外壁の内部にまで水分が染み込み、木部が腐食し、断熱材が湿気を含み、家の寿命が短くなります。
さらに進行すれば、塗装ではなく「張り替え」や「内部修繕」が必要となり、費用は数倍に膨らみます。
FPの世界でいえば、これは“複利で増える損失”です。
放置すればするほど、ダメージは増え、将来の支出が加速する。
いわば「見えない負債」が住まいの中で進行しているようなものです。
10年ごとの塗り替えは「支出の平準化」
FPとして家計を拝見していると、修繕費を“突発的な出費”として捉えている方が多くいらっしゃいます。
しかし、外壁塗装のような定期メンテナンスは「支出の平準化」で考えるのが正解です。
10年に一度の塗り替えは、単に“タイミング”ではなく、計画的な支出を分散させるための仕組みです。
たとえば15年放置して200万円かけて修繕するより、10年ごとに100万円で手を入れるほうが、総支出を抑えられる場合が多い。
長期的に見ると、「小さく早く整える」ほうが結果的にお得なのです。
これはまさに、投資の世界でいう“分散投資”や“リスク平準化”と同じ考え方。
塗装のタイミングを逃さないことは、住宅におけるリスク管理の第一歩です。
塗料の種類は「ライフプラン」で選ぶもの
塗料を選ぶとき、多くの方が「どれが一番長持ちしますか?」と質問されます。
もちろん、耐久性の高い塗料は魅力的ですが、FPの立場から言えば“住む期間”で考えることが重要です。
一般的な耐用年数は次の通りです。
- アクリル塗料:約5〜7年
- シリコン塗料:約10〜12年
- フッ素塗料:約15〜20年
- 無機塗料:約20年以上
もし「あと10年で住み替える予定」というご家庭なら、コストパフォーマンスに優れたシリコン塗料で十分です。
一方で、「子どもが巣立ってもこの家にずっと住みたい」という方には、耐久性の高いフッ素や無機塗料をおすすめします。
塗料の選び方は、資産運用でいう「運用期間の設計」と同じです。
いつまでこの資産を持ち続けるのかを前提に、投資(=メンテナンス)の規模を決める。
これがFP的な塗装費の考え方です。
修繕積立は“家の未来口座”に
外壁塗装は突然発生する支出ではありません。
10年に一度、確実にやってくる定期支出です。
であれば、あらかじめ“家の未来口座”として積み立てておけば、家計への負担はほとんど感じません。
たとえば、毎月1万円を別口座に積み立てておくと、10年で120万円。
これだけで外壁と屋根のメンテナンス費をまかなうことができます。
ボーナス月だけ多めに積み立てる方法でも構いません。
FPとしては、住宅ローン返済と並行して「次の修繕資金」を同時に準備しておくことを推奨しています。
住宅ローンは“過去の購入費用”を返していくお金。
修繕積立は“未来の維持費用”を支えるお金。
両者をバランスよく進めることが、安定した住まい経営の基本です。
「お金を使わない」より「資産を減らさない」選択を
多くの方が塗装を先延ばしにする理由は、「お金を使いたくない」からです。
ですが、FPの立場から見ると、「お金を使わないこと」と「資産を守れないこと」は別問題です。
塗装を後回しにした結果、外壁が剥がれ、雨漏りが起き、結局大規模修繕が必要になる。
これは“支出を先延ばしにして資産を削る”状態です。
一時的な節約が、長期的な損失につながる。
それが住宅という資産の怖いところです。
外壁塗装にかけるお金は、消費ではなく「防衛投資」。
将来の支出を抑えるための行動です。
「まだ大丈夫」と感じるタイミングこそ、最もコストを抑えられるタイミングとも言えます。
まとめ:FPと職人、視点は違っても目的は同じ
FPは、お客様の人生とお金の流れを設計すること。
職人の仕事は、お客様の家を長く守ること。
立場は違っても、目指しているのは同じです。
「大切な資産を、できるだけ長く、安心して維持していくこと」。
外壁塗装は、見た目をきれいにするための工事ではなく、
未来の支出を減らし、家の価値を保ち続けるための計画的支出です。
支出を恐れず、構造的に考える。
それが、FPと職人に共通する“持続可能な暮らしの知恵”なのだと思います。

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